遅刻が悪い、が大前提だが。

桜田大臣が質問通告を受けていた予算委員会に3分遅刻し、それに野党が反発して5時間あまり予算委員会が止まる事態が起きました。

日本国憲法に国会は国権の最高機関であると規定され、各大臣は国会の要請がある時には出席して答弁しなければならない、と義務付けられている以上、遅刻したことは一義的には大臣側の責任です。

しかし、そんなことは百も承知の大臣、そしてその部下たちがなぜ遅刻をしてしまったのか。その経緯を追えば今日に限っては下記のような事情もあったようです。

9時から始まった予算委員会、公明党の質疑を終え、立憲民主党の小川淳也議員の質問時間に入りました。小川議員は統計問題について厳しく追及します。その中で、政府参考人(官僚)がたびたび答弁につまり、また質疑者が意図する答弁をできず、何度も速記が止まり(質問時間が止まり)ました。

この様子を見て、本来10時15分から今井雅人議員に答弁要求されていた桜田大臣は、ご自身の出番はだいぶ遅くなる、と考えたようです。通常の委員会運営では、速記が止まっている時間は質疑時間にカウントされず、その分スケジュールが遅れていくからです。

ですから、桜田大臣が、定刻の10時15分には自分に対する質問は始まらないだろう、と考えるのも無理はありませんし、おそらく秘書官や部下もそう考えたのでしょう。

しかし今日に限ってはイレギュラーなことが起こりました。小川淳也議員の質問時間はまだ多く残っていたにもかかわらず、政府参考人(官僚)が十分な答弁をするには、その準備に午後まで時間がかかる、という結論にいたり、小川議員は予定通り10時15分でいったん質問を打ち切って午後に質問をずらすことになりました。つまり、桜田大臣やその周辺には想定外の事情で、当初の予定どおり10時15分に今井雅人議員の質問時間に突入することになってしまったのです。

桜田大臣は、それまでの時間「打合せ」をされていた、と答弁されています。まじめな桜田大臣は、ギリギリの時間まで、想定される質問に対する答弁を、官僚と打ち合わせていたのだろうと思います。しかし突然の繰り上げで、あわてて委員会室にかけつけた、結果、3分の遅刻です。

本来の予定通りの時刻であったとはいえ、この3分の遅刻、5時間も委員会を止めなければならないほどのことでしょうか。立憲民主党の野党議員も、その幹部は多くが民主党で与党を経験し、閣僚や内閣も経験しています。「悪夢のような民主党政権」の唯一の資産は、それまでの野党議員が与党や政権運営を経験し、国会運営の中で与野党で配慮できるところは配慮するという知恵を身に着けた、その結果、「国民のための本質的な議論を国会の場ですることができるようになった(はず)」ということではないでしょうか。

実際、民主党政権においても、閣僚が委員会に遅刻してくることはありました。タイトル画像に使った2010年の3月3日には3人の閣僚が同時に遅刻する、という事態もありました。その際には15分ほどで委員会は再開しています。

(参考) 仙谷・前原・原口3閣僚が遅刻 予算委開会15分遅れる http://www.asahi.com/seikenkotai2009/TKY201003030224.html

その記憶を少し思い出していただければ、このような突発的な事情の中で数分遅れた大臣に対して烈火のごとく怒り、委員会そのものを止めてしまう、ということ以外の選択肢はなかったのか、と残念に思います。

今日は一般質疑ですから、要求のあった大臣以外は出席できません。ですから、早めに来て座っておく、ということもできないのです。また、予算委員会の行われる第一委員室の近傍に、大臣が待機しておけるような部屋もありません。

一方で、答弁要求をしてお呼びした大臣に、質問時間の関係から質問できずに結果無駄足、ということも国会ではよくあります。

一義的には遅刻した側が悪いという建前は崩せませんが、国会改革が叫ばれて久しい昨今、こういったことで国会が空転することも「なんだかなぁ」と思っています。